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梅、桜、藤、桃、椿、芍薬、菊、牡丹、紫陽花、蓮、百合、鬱金、薫衣草、撫子・・・と書物を1ページずつ捲りながら、花の名前を確認していく。
けれど、やはり御衣黄という桜についてのページは、今回届いた書物にも記載がなかった。
普通の薄紅色の桜のページに御衣黄の桜について何か記載があるかと読んでみたが、そこにも何も書かれていなかった。
また、未だ現物を見たことがない黄桜のことについても、どの書物にも記載がなかった。
(御衣黄という桜も、黄桜のことも書かれていない。黄桜という桜は実在するのだろうか?)
(それとも黄桜が御衣黄という桜のことなのか?)
(誰かその桜について知っている者はいないのか…?)
(だが書物に何も書かれていないところを見ると、知っている者はほぼいないであろう…)
何度ページを捲り直しどれだけ確認しても、その桜について書かれたページはひとつもなかった。
(御衣黄という桜には意味はないのか…?)
ボクシムは何か他に手がかりはないかと、今度は梅、藤、桃…と、桜ではない花のページもひとつずつ丁寧に読み始めた。
1ページずつじっくりと丁寧に目を通し、隅々まで確認するものの、御衣黄に関することは何ひとつ書かれていない。
(やはりその桜には意味がなかったのか)
そう半分諦めかけていた時だった。
(あっ、こ、これは…)
ボクシムは思わず息を呑んだ。
それは鬱金についての説明が書かれてあるページだった。
鬱金についての説明がある文章の最後に、なんと桜のことが書かれていたのだ。
『鬱金桜といわれるものがあるが、これは鬱金の花とは別のものである。鬱金桜は鬱金の根を染料に用いた鬱金色に由来する。
また、別名「黄桜」とも呼ばれることもあるが、淡黄色のものは鬱金桜、淡緑色のものは花の色が衣装の萌黄色に似ていることから御衣黄といわれる。鬱金桜の花の意は、優、美しき人。御衣黄の花の意は、永遠、愛。』
(御衣黄の花の意味は、永遠)
(永遠とは、ヨンウォン皇子様のことではないか!)
(これか。これだったのか!)
(ということは、実桜が王妃様の言われていた女人だったのか…)
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