繋がる証

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ボクシムは心の中で燻っていた謎が解けたことで、安堵するように大きく息を吐いた。 興奮するような何とも言えない高揚感が身体の中を流れていく。 しかし、安堵したのも束の間、新たにまた1つ疑問が生まれた。 (いや待て。この御衣黄という桜の下で実桜が皇子様と出逢ったということだけで、実桜を王妃様が言われていた女人と決めつけても良いものなのか?) ボクシムは他に何か御衣黄に関する記載がないか、そのページを隅から隅まで読み直してみたが、御衣黄に関する記載は最後の数行だけだった。 (2人とも御衣黄の護符と簪を持っている。それが証なのか?) 何か少し腑に落ちないボクシムは、もう一度書物を最初から丁寧に繰っていた。 今まで御衣黄や黄桜という文字ばかりに気を取られていたボクシムだったが、あるページで急に手が止まった。 見つけた瞬間、手が震え始める。 (あ、あった…) 『桜桃。花の色は白色であり、果実は丸みを帯びた赤い実なり。中に種子が1つある。別名、実桜(ミザクラ)といわれる。花の意は真実なる心。』 (こ、これだ。繋がった…) 実桜がしていたあの簪。 ヨンウォン皇子から贈られた、淡い黄緑色の桜に桜桃色の玉が2つ付いているあの簪が証だ。 ファヨン王妃が言っていた言葉ー。 『私は“永遠”という意味を込めて皇子にヨンウォンと名付けました。現在、過去、未来と言った時空にとらわれることなく、多くの人を愛し、愛され、まっすぐに生きていってほしいという願いを込めてです。 まっすぐに生きていれば、いつかきっとヨンウォンの前に、偽りのない真実の心を持った女人が現れるはずです』 御衣黄の花の意味である『永遠、愛』とは、ヨンウォン皇子様のことだ。 そして、桜桃の別名と花の意味である『実桜(ミザクラ)、真実なる心』とは、実桜のことだ。 ボクシムはゆっくりと大きく頷きながら確信した。 頬を緩め、その書物をギュッと握りしめる。 (王妃様、あの簪が証だったのですね。これから、もうひとつの任務を遂行させていただこうと思います) ボクシムは机の引き出しを開け、奥に隠しておいた手紙を取り出した。 「これをヨンウォン皇子様に渡す時がきたようだ。直ちに皇子様に渡しに行かなければ…」 ボクシムは独り言のようにそう呟いたあと、その場から立ち上がった。
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