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母からの手紙
時刻は既に夕方になっていた。
こんな時間から王宮に出向くのは少し躊躇われたが、ボクシムは一刻でも早くヨンウォン皇子に手紙を届けた方がいいだろうと判断し、急いで王宮へと向かった。
王宮の門の前に立っている警備兵に通行証を見せて王宮の中に入ると、すぐさまヨンウォン皇子が居住する建物へと足を運んだ。
そして、部屋の前に仕える皇子付きの内官に「緊急の用件で皇子に拝謁を願いたい」と告げ、ヨンウォン皇子が出てくるのを待った。
「ボクシム先生、このような時間にどうされたのですか? 緊急の用件とは?」
いつもと違うボクシムの様子に、ヨンウォン皇子は戸惑いがちに視線を向けた。
「皇子様、このような時間に申し訳ございません。今日は急を要することがございまして参内致しました。すぐにお話をさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「分かりました。ボクシム先生、私の部屋へどうぞお入りください」
部屋に入るとボクシムは皇子に促され、皇子の前に腰を下ろした。
そして胸の中に入れていた手紙を出し、ヨンウォン皇子の前に差し出した。
「皇子様、このような時間に申し訳ございません。一刻でも早くこの手紙を皇子様にお渡しせねばと思い、持って参りました」
「ボクシム先生、この手紙は?」
ヨンウォン皇子が差し出された手紙に視線を向けながら尋ねた。
「この手紙はファヨン王妃様からヨンウォン皇子様へ宛てられた手紙でございます」
「は、母上…ですか…?」
ヨンウォン皇子はボクシムが発した言葉の意味が理解できないといった感じで、怪訝そうに眉を寄せて聞き返した。
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