母からの手紙

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「はい。さようでございます。生前、ファヨン王妃様が私にこの手紙をヨンウォン皇子様にお渡ししてほしいと託されました」 「…………」 「驚かれるのは当然のことと存じます。ファヨン王妃様は生前、ヨンウォン皇子様に何もして差し上げることができない…と心を痛めておいででした。そして、唯一できることと言えばこの手紙を残すことだと申され、もしヨンウォン皇子様が何かに迷った時や人生の岐路に立たされた時があれば、この手紙を渡してほしいと私に託されたのです」 「は、母上が…?」 皇子はやっと理解ができたのか、驚きのあまり目を大きく見開き、声が上擦っている。 「はい皇子様。王妃様は手紙を渡す時期は私に任せると申されました。私はいつ皇子様にお渡しするべきか随分と悩みましたが、今がこの手紙をお渡しする一番ふさわしい時期ではないかと思い、本日お持ちさせていただいた次第でございます。突然のことで驚かれたとは思いますが、どうかファヨン王妃様からの手紙をお受け取りください」 ボクシムはそう言ってヨンウォン皇子に深々と頭を下げた。 「王妃様は本当に皇子様のことを心から大切に思われ、愛しておいででした。そしてとても思いやりに溢れる聡明なお方でした」 ボクシムは最後にそう告げて柔らかな笑みを浮かべると、 「私にできることがありましたら何なりとお申し付けください。微力ながら皇子様のお役に立てれるよう努力させていただきます。では皇子様、私はこれで失礼させていただきます」 と言って、ヨンウォン皇子の部屋をあとにした。
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