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ボクシムが帰ったあと、ヨンウォンはしばらく呆然としていた。
何が起こったのか未だに信じられなかった。
ボクシムが持ってきた、突然の母からの手紙。
それは全く思いもしなかった驚くべきものだった。
母がこのような手紙を自分に残していてくれていたとは。
母の記憶は本当に薄っすらとしか覚えていない。
いつも穏やかに微笑んでいて、とても優しい人だったということだけだ。
ボクシムが持ってきた手紙に目をやると、表に 『ヨンウォン皇子へ』 と書かれてあった。
初めて目にする母が書いた文字。
それはとても凛とした美しい文字だった。
母はこのような美しい文字を書いていた人だったのか…。
ほとんど記憶にない母の顔をどうにか思い出すように、ヨンウォンは目を閉じた。
ヨンウォンに向けて穏やかに微笑む母の顔がぼんやりと浮かぶ。
ヨンウォンは閉じていた目を開き、その母の微笑みに応えるように、ふっと笑みを浮かべた。
そして手紙を手に取り、ゆっくりと封を開けた。
自分に向けてどんなことが書かれてあるのか、ドクンドクンと鼓動が早くなる。
封の中に収められていた手紙を開くと、ぎっしりと美しい文字が綴られていた。
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