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実桜をボクシムの屋敷に戻してからというもの、ヨンウォンは実桜に逢いたい気持ちを一生懸命抑えながら過ごしてきた。
王の立場を危うくしてはならない、実桜を傷つけることは避けなければならないと思い、必死で自分を制していた。
この数ヶ月、実桜に逢えないことがどれだけ苦しかったことか。
だが、母からの手紙には、愛する女人ができたときは王宮の状況や皇子としての立場を考えることなく、その気持ちを伝え、愛する人と縁を繋いでほしいと書かれてあった。
実桜にこの気持ちを伝えてもよいのだろうか?
もし実桜にこの気持ちを伝えてしまえば、実桜と共に生きていきたいと強く願ってしまう。
そして、次に実桜に逢ってしまえば、実桜を手放すことはもう決してできないはずだ。
ヨンウォンは実桜に逢いたくてたまらなかった。
実桜に逢いたい。
どうしても逢いたい。
逢いたくてたまらない。
そして、もう二度と実桜を手放したくない。
実桜への想いがとどまることなく溢れ出る。
部屋の扉を開けると東の空が白み始めていた。
薄明るくなった光の向こうで、母が優しく微笑んでいるような気がした。
ヨンウォンは夜が明けるとすぐに急いで馬を走らせ、ボクシムの屋敷へと向かった。
巧みに手綱を操りながら猛スピードでボクシムの屋敷に向けて馬を走らせる。
もうすぐ実桜に逢えると思うと、気持ちが逸り、手綱を握る手にも自然と力が入っていた。
いつもの半分の時間で屋敷の前に着き、馬から降りると、実桜がちょうど屋敷の門を開けようとしているところだった。
突然目の前に現れたヨンウォンに、実桜はまるで幽霊でも見たようにとても驚いた顔をして目を見開いた。
それはそうだろう。
最後に実桜と言葉を交わしたのは実桜が王宮からこの屋敷に戻る時だ。
あれは確か秋が終わるころだった。
あれから季節は冬になり、そして春がもう、すぐ目の前まで来ていた。
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