母からの手紙

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「早速ですが、母からの手紙を拝読致しました。母があのような手紙を私に残してくれていたとは本当に驚いたのですが、同時にとても嬉しく、有難く、そして母からこんなにも愛されていたのだということを初めて知り、とても幸せに思いました」 「皇子様、ファヨン王妃様は本当にヨンウォン皇子様のことを心から大切に思われ、愛しておいででした」 「はい、私は今まで母から愛されてはいなかったのではないかと思っていたのですが、これほどまで深く私のことを愛し、気にかけてくださっていたとは、母の恩愛を心から感じております。そして、あの手紙を届けてくださったボクシム先生にも本当に感謝しております」 「皇子様、とんでもございません。今まで王妃様から預かっていながら、お渡しするのが今になってしまいまして申し訳なく思っております」 「いえ、ボクシム先生。今、あの手紙をいただいたからこそ、私もいろいろ考え、気持ちを見つめ直し、決心することができたのです。それでこんな早朝ではございますが、ボクシム先生にお願いがあって参った次第です」 ヨンウォンはそう告げたあと、再びきちんと姿勢を正した。 「ボクシム先生、私は実桜のことを心から慕っております。これから実桜にこの気持ちを伝え、もし実桜も同じ気持ちであるならば、生涯実桜と共に生きていきたいと願っております。 そして実桜がこのシンファの国にとどまってくれるというのであれば、実桜と婚姻し、この国で共に生きていくつもりです。また実桜が日本という自分の国に帰りたいのであれば、私は実桜と共に日本という国に行こうと思っております。 どちらにせよ、実桜と離れるつもりはございません。 そこでもし、実桜の同意を得られた場合、ボクシム先生にいくつかお願いがあるのです」 「お願いとは?」 「まず、実桜との婚姻のお許しをいただきたいこと、もしこの国で実桜と共に生きる場合、実桜をボクシム先生の遠戚として王宮に迎え入れること、そして私が実桜の国に行く場合、私はもう父上や兄上を助けて差し上げることができないので、私の代わりにボクシム先生にそれをお願いしたいのです」 ヨンウォンの話を聞いたボクシムは何か考えながら、言葉を発することなく黙りこんでいる。 「ボクシム先生、この願いを聞いていただけますでしょうか?」 ヨンウォンはボクシムの顔を窺うように覗き込んだ。
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