母からの手紙

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「皇子様、実桜との婚姻に関しましては、実桜の同意さえ得られれば何も反対することはありません。私も喜んで実桜の幸せを願います。そして、私の遠戚ではなく、実桜を私たち夫婦の養女として迎え入れ、娘として皇子様の元へ送り出そうと思っております」 「ありがとうございます。ボクシム先生」 ヨンウォンがボクシムにとても嬉しそうな顔を向けた。 「ただ…」 「ただ…?」 「はい、皇子様が実桜と共に日本という国に行かれる場合ですが、私が王様やスンヒョン皇子様のお力になれるのでしたら喜んでお引き受け致しますが…、それより、皇子様がこの国を離れることを王様がお許しになるのでしょうか?」 「それは…」 「そちらの方が難しいと思われますが…」 「いえ、ボクシム先生、私は第二皇子です。実桜の国と友好を深めることもできますし、それはどんなことがあっても必ず私が王様の許しを得るように致します。私にとって実桜は大切な存在ですから」 ヨンウォンは真剣な表情でボクシムを見つめた。 その真っ直ぐに見つめるヨンウォンの真剣な眼差しを見たボクシムは、 「皇子様のお気持ちはよく分かりました。では実桜の同意が得られれば、私は喜んで皇子様のご意思に従わせていただきます」 と言って、ゆっくりと深く頭を下げた。 「ボクシム先生。本当にありがとうございます」 「いいえ、皇子様。よくご決断されましたね」 「は、はい…。あ、あの…、では…、これから実桜を少しお借りしてもよろしいでしょうか?」 ヨンウォンは少し照れたように、気まずそうな笑みを浮かべてボクシムに視線を向けた。 「どうぞ皇子様、しっかりとお気持ちをお伝えください」 ボクシムはヨンウォンににっこりと優しい笑みを向けて微笑んだ。
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