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「ほんとですか?」
「ああ、そうしよう」
ヨンウォン皇子はそう言って口元を緩めると、麗しい笑みを浮かべて私を見つめる。
その麗しい笑みに見つめられ、私の胸がドキンと反応する。
私は慌ててヨンウォン皇子から視線を逸らすと、眼下に見えるヨンジュの都を見ながら指をさした。
「あ、あっちが、ボクシム先生のお屋敷かなー」
心臓がドクンドクンと音を立て始める。
私はどうにかその音を鎮めようと、斜め右側の方向を指さしながら、落ち着きなく視線を動かした。
すると。
「実桜、ボクシム先生の屋敷はこっちだ」
皇子が不意に後ろから私の右手を優しく掴み、その手を左側へと移動させた。
後ろから不意に皇子に手を掴まれ、一瞬何が起こったのか分からず、目を見開いたまま身体が固まってしまう。
同時に鎮めようとしていた心臓の音が、瞬く間に大きな音を鳴り響かせながら、猛スピードで動き始めた。
「あそこに王宮が見えるであろう」
そんな私とは裏腹に、皇子は今度は私の右手を王宮の方向へと動かした。
「だから、ボクシム先生の屋敷はこっちだ」
皇子が屋敷の場所を教えてくれるけれど、そんなのはもう全く視界に入ってこなかった。
ドキドキドキドキと、皇子に聞こえてしまいそうなほど心臓が音を鳴らし続けている。
後ろを振り返ろうかどうしようかと視線を少し下に落とすと、すぐ真下に皇子の足が見え、私の真後ろに皇子が立っているのが分かった。
その状況にますます私の身体は硬直してしまう。
私はその場に立ち尽くしたまま、言葉を出すことも振り返ることもできなかった。
そんな私にヨンウォン皇子は、掴んだ私の右手をゆっくりと下ろすと、後ろから包み込むように私を抱きしめた。
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