4059人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
「実桜、これから私の言うことをよく聞いてほしい」
「はい…」
「私はこれから先、実桜と共に生きていきたいと思っている。実桜と婚姻し、生涯実桜と共に生きていきたいのだ。もし実桜がこの国にとどまってくれるなら、実桜を私の妃として迎え、王宮で共に暮らすつもりだ。もし実桜が日本という国に帰りたいのであれば、私は実桜と共に実桜の国に行き、日本という国で実桜と共に暮らそうと思っている。どうか私のそばで、私の妃として、共に生きてほしい…」
(…………)
(ど、どういうこと…?)
突然の皇子からの告白に、私の頭の中の思考が完全に止まってしまった。
(い、今、婚姻って言ったよね…?)
驚きすぎて、皇子を見つめたまま固まってしまった私に、
「み、実桜…?」
皇子が窺うように私の顔を覗き込んだ。
私は呆然としたまま、何も言葉を発することができない。
(こ、婚姻って、皇子と結婚するってことだよね…)
なんとか頭を働かせようとするが、婚姻という言葉が私には大きすぎて、そこから先に全く頭がついていかない。
私のその様子に、皇子が悲しそうに口を開いた。
「実桜、嫌なのか…?」
「…………」
「やはり…、嫌であるか…」
皇子はとても切なそうな重苦しい表情で、視線を下に落とした。
「そうか…。私と共に生きるのは嫌であるか…」
皇子が呟くように溜息をついた。
私は小さく首を横に振った。
「み、実桜、ではよいのか? 私と共に生きてくれるのか?」
皇子が驚いたように私に視線を向け、とても嬉しそうな顔をして聞き返す。
私は再び小さく首を横に振った。
「ど、どういうことなのだ?」
今度は皇子が不安そうな顔をして、私を見つめる。
「わ…、わかりま…せん…」
私はやっとの思いで、絞り出すように声を出した。
「わ、わからない…?」
皇子にそう聞き返され、また無言でコクリと頷く。
皇子の顔をじっと見つめたまま、今にも泣き出してしまいそうな私の様子に、皇子は口元を緩めると、
「そうだな。突然こんなことを言われたら、戸惑うのは当然のことだな…」
と、私の頭をそっと優しく撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!