母からの手紙

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「実桜、これから私の言うことをよく聞いてほしい」 「はい…」 「私はこれから先、実桜と共に生きていきたいと思っている。実桜と婚姻し、生涯実桜と共に生きていきたいのだ。もし実桜がこの国にとどまってくれるなら、実桜を私の妃として迎え、王宮で共に暮らすつもりだ。もし実桜が日本という国に帰りたいのであれば、私は実桜と共に実桜の国に行き、日本という国で実桜と共に暮らそうと思っている。どうか私のそばで、私の妃として、共に生きてほしい…」 (…………) (ど、どういうこと…?) 突然の皇子からの告白に、私の頭の中の思考が完全に止まってしまった。 (い、今、婚姻って言ったよね…?) 驚きすぎて、皇子を見つめたまま固まってしまった私に、 「み、実桜…?」 皇子が窺うように私の顔を覗き込んだ。 私は呆然としたまま、何も言葉を発することができない。 (こ、婚姻って、皇子と結婚するってことだよね…) なんとか頭を働かせようとするが、婚姻という言葉が私には大きすぎて、そこから先に全く頭がついていかない。 私のその様子に、皇子が悲しそうに口を開いた。 「実桜、嫌なのか…?」 「…………」 「やはり…、嫌であるか…」 皇子はとても切なそうな重苦しい表情で、視線を下に落とした。 「そうか…。私と共に生きるのは嫌であるか…」 皇子が呟くように溜息をついた。 私は小さく首を横に振った。 「み、実桜、ではよいのか? 私と共に生きてくれるのか?」 皇子が驚いたように私に視線を向け、とても嬉しそうな顔をして聞き返す。 私は再び小さく首を横に振った。 「ど、どういうことなのだ?」 今度は皇子が不安そうな顔をして、私を見つめる。 「わ…、わかりま…せん…」 私はやっとの思いで、絞り出すように声を出した。 「わ、わからない…?」 皇子にそう聞き返され、また無言でコクリと頷く。 皇子の顔をじっと見つめたまま、今にも泣き出してしまいそうな私の様子に、皇子は口元を緩めると、 「そうだな。突然こんなことを言われたら、戸惑うのは当然のことだな…」 と、私の頭をそっと優しく撫でた。
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