母からの手紙

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「あー、なんか皇子を怒らせること言ってしまったのかな…」 両手で顔を覆いながら心の声が口から漏れる。 ファヨン王妃のお墓に挨拶するまでは皇子は普通だったはずだ。 なのに。 (んっ? 普通? 違う。そうじゃない) はっと息を呑み、両手で口元を押さえる。 「あっ、そうだ…。婚姻って…」 口からそう言葉が零れた途端、心臓がそのことを思い出させるようにドクンドクンと速度を上げ始める。 そう、ヨンウォン皇子からの突然の告白。 あのとき、皇子から言われたとき、驚きすぎて息が止まるかと思った。 だって、告白と言ってもただの告白じゃなくて、婚姻して共に生きていきたいという告白。 ようするに、プロポーズだ。 『私は実桜と共に生きていきたいと思っている。実桜と婚姻し、生涯実桜と共に生きていきたいのだ。もし実桜がこの国にとどまってくれるなら、実桜を妃として迎え、王宮で共に暮らし、もし実桜が日本という国に帰りたいのであれば、実桜と共に実桜の国に行き、共に暮らそうと思っている。どうか私のそばで、私の妃として、共に生きてほしい』 皇子の言葉が頭の中で何度も繰り返される。 恋愛もしたことない私がいきなり結婚だなんて…。 ついこの間、男の人を好きになる気持ちを知ったばかりなのに…。 それに私はまだ18歳だ。 日本にいれば普通なら高校を卒業して、今年から大学生になっているはず。 そんな年齢で結婚なんて…。 ヨンウォン皇子を好きな気持ちは変わりない。 心から、震えるほど、皇子のことがたまらなく大好き。 今日、久しぶりに皇子の顔を見たとき、私の心は喜びでいっぱいだった。 皇子に逢えた瞬間、ドキドキが止まらなかった。 あの景色のいい高台で抱きしめられたとき、とろけてしまうくらい、うれしくて仕方なかった。 そして「実桜、愛している」と囁かれたとき。 好きな人にそう言われることが、こんなにも幸せな気持ちで満たされるということを私は初めて知った。 そんな大好きな皇子から言われたプロポーズ。 女の子だったら涙が溢れるほど嬉しいに決まっている。 嫌な気持ちなんて1ミリもあるわけない。 だけど。 心の中は嬉しさで満ち溢れているのに、いろんなことが頭をよぎって、素直に喜べない私がいた。
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