母からの手紙

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私がこの国の人間だったらどんなに良かっただろう。 そしたら、皇子からのプロポーズを喜んで受け入れていたのに。 でも、私はいつか日本に帰るかもしれない。 今はまだ日本への帰り方は分からないけれど、もし帰ったとき私が結婚していたら、パパやママはきっと驚くはずだ。 ただでさえ私が突然いなくなって心配かけているというのに、これ以上パパとママを悲しませるようなことはしたくない。 かといって、皇子のプロポーズを断ってしまったら…。 皇子はいつか他の女性と結婚してしまうだろう。 いつ日本に帰れるか分からない状況で、いや、もしかしたらもう一生日本に帰ることができないかもしれないのに、皇子が他の女性と結婚してしまうのを見るなんて、今の私には絶対に耐えられない。 そうなったとき、私はきっとものすごく後悔してしまうはずだ。 皇子は私がプロポーズを受け入れるなら、このシンファの国で暮らすという選択肢だけじゃなく、日本で一緒に暮らしてもいいとも言ってくれた。 もし私が日本に帰りたいのなら、皇子も一緒に日本に来てくれるというのだ。 日本への帰り方が分からない今、それは不可能な話だ。 それに、日本とシンファの国では何もかもが全く違うというのに、皇子が日本で生活できるのだろうか? 皇子なら、最初は戸惑うかもしれないけれど、そのうち日本で順応して生活していけるような気もする。 だけど、日本で生活できるできないに関わらず、この国の皇子を日本に連れて行くことなんて、そんな迷惑をかけること、私がしたくない。 あー、いったいどうしたらいいんだろう…。 私は両手で頭を抱えながら大きなため息をついた。
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