母からの手紙

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「実桜は、その時どう思ったのじゃ?」 「私…、ほんとは嬉しかったんです。皇子様のこと大好きだし…。でも、パパとママ…、お父さんとお母さんのこととか、日本に帰ることとか考えたら…、返事とかできなくて…。それにまだ私18歳になったばかりだし…」 「18歳? 実桜の国では18歳だとまだ婚姻はしないのか?」 「する人もいます。だけど…、ほとんどの人はもっともっと後でするんです」 「そうなのか。このシンファの国では15、6歳で婚姻の話が来始め、17、8歳でほとんどの女人が婚姻してしまうからな。そういえばミランが私と婚姻したのも確か17歳だったはずじゃ」 「ミランさんは17歳で婚姻されたのですか?」 「そうじゃ。だから実桜の年齢だとこの国ではちょうど適齢なのじゃ」 ボクシム先生は目を細めて微笑んだ。 ボクシム先生の微笑む顔を見て、どうしていいのか分からず、ますます涙が溢れる。 「実桜?」 ボクシム先生がいつになく真剣な顔をして私を見つめた。 「実桜、少し冷たいように聞こえるかもしれんが、これは実桜の一生の問題じゃ。だから誰の意見にも惑わされず、実桜がひとりで考えるのじゃ」 「わ、私がひとりでですか…?」 ボクシム先生にドンと突き放されたようで、一気に不安に陥る。 「そうじゃ。他人の意見に従っていたら、もし自分の思った通りにならなかった時、あのとき別の道を選んでおけばよかったと実桜が後悔してしまうからじゃ。実桜が自分で考えて答えを出したなら、たとえ自分の思った通りにいかなくて後悔したとしても、納得できるはずじゃからな」 「…………」 「決して実桜を突き放しているのではないぞ。私とミランは、実桜のことを娘同然にとても大切に思っておる。実桜がどんな答えを出したとしても、実桜の答えを尊重するつもりじゃ。実桜を守り、実桜の力になるから心配することはない。実桜が皇子様と婚姻したいというのであれば、私たちの養女として送り出すつもりじゃ。実桜が自分の国に帰りたいのであれば、難しいかもしれないが、どうにか帰れる方法を探してみよう」 「は、はい…」
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