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おみくじのお告げ
「神様ってほんとにいるのかなー」
授業も終わり、柔らかい春の陽射しを感じるようになった放課後、私はリュックに教科書や筆記用具を詰め込みながら、帰宅する準備をしていた。
「わかんないけど、多分いるんじゃない?」
隣から優里の声が聞こえる。
「えっ、優里、今なんか言った?」
私は声の主の方に顔を向けながら聞き返した。
「実桜が神様がいるかって聞いたんでしょー」
少しくせっ毛のあるショートヘアを揺らしながら、優里がクスクスっと笑う。
「えっ、私そんなこと言った?」
「言ったよー。実桜ったらどうしたの? 悩みごとでもあるの?」
どうやら頭で考えていたことをそのまま口にしてしまったみたいだ。
「いや、そうじゃなくて」
私は少し口ごもりながら、視線を下に落とした。
「どうしたの実桜。悩みごとがあるなら聞いてあげるよ」
優里が心配そうな顔をして私の顔を覗き込む。
「全然悩みごととかじゃなくてね。毎年神社に初詣に行って、『今年こそは彼氏ができますように』ってずっとお願いしてるのに、全然彼氏ができないってことはやっぱり神様はいないのかなって思って」
そう答えながら、チラリと優里の顔に視線を移すと、優里は驚いたように目を見開いたまま一瞬フリーズした。
そして。
「もう実桜ったら何を悩んでるのかと思ったら。おもしろすぎというか、可愛いというか」
優里が涙を出しながら大笑いをし始めた。
「もう優里ー!私は真剣なんだけどー!」
私は恥ずかしさを隠すように頬を丸く膨らませた。
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