母からの手紙

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「よいか、実桜。他人のことやしきたりなどは考えなくてよいのじゃ。実桜がこれから先、どのように生きていきたいかということが大事なのじゃよ。 ここで暮らすも、自分の国に戻ると決めるのも構わない。皇子様と婚姻するか、別の人と婚姻するのも実桜の自由じゃ。これから実桜はまだまだたくさんの人と出逢うであろう。その中で、お互いが好意を抱ける人間に出逢えるということはとても特別なことじゃよ。 私やミラン、実桜の父上や母上も実桜よりは先に亡くなってしまうからな。その時に、実桜が愛する人と生きていれば、共に支えあうことで、辛さや悲しさも軽減される。それが皇子様であれ、別の人であっても構わない。実桜が幸せになれる道を、実桜がどうしたいのかを一番に考えるのじゃよ」 「はい。ボクシム先生…」 ボクシム先生は大きく頷きながら私の頭を撫でると、部屋から出て行った。 ボクシム先生が部屋から出て行きひとり残された私は、ボクシム先生に言われたことを反芻しながら、自分が一番どうしたいのかを考え始めた。 けれど。 やっぱりいろんな人が、ことが、思いが頭に浮かび、自分がどうしたいのかが全くわからない。 私はどうしたいんだろう。 何が正解? 何を選んだら私は後悔しないの? 自分の心に何度も何度も問いかける。 でも、何度問いかけても何も答えは出てこなかった。 ヨンウォン皇子に返事をするまであと5日。 私はとにかくなんとか答えを出そうと、自分への問いかけを幾度となく繰り返した。
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