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「私たちはいつでも実桜の味方よ。実桜が一生懸命考えて出した答えなら、私たちも喜んで従うから安心していいんだからね。だから実桜の思う通りにしなさいね」
「ミランさん…」
ミランさんは私がどんな答えを出したのか聞くこともなく、不安でいっぱいな私の心を包み込んでくれるように温かい言葉を降り注いでくれた。
もしかしたら、私がボクシム先生やミランさんの元から去ってしまうかもしれないのに…。
ミランさんの優しい言葉にじわじわと涙が浮かんでくる。
「あら、泣いたらお化粧が崩れてしまってせっかくの可愛い顔が台無しよ。やっぱり娘がいるっていいわねー。ほら、実桜笑って」
ミランさんはそう言って手際よく結った髪の毛に、ヨンウォン皇子からもらった簪をスッと挿してくれた。
そうしているうちに、庭からボクシム先生の呼ぶ声が聞こえた。
どうやらヨンウォン皇子が屋敷に来たみたいだ。
私は立ち上がると、
「ミランさん、ありがとうございます。行ってきます」
と言って、涙を浮かべたままぎこちない笑顔を向けた。
ミランさんは優しく私を抱きしめると「行ってらっしゃい」と言って、温かく微笑んだ。
屋敷の庭に出ると、ボクシム先生とヨンウォン皇子が話をしていた。
話している2人にそっと近づいていく。
するとボクシム先生が急にクルリと振り返り、私に近づいてきた。
私の顔を見て愛おしむようにニッコリと微笑み、目を細める。
「実桜、自分の気持ちをしっかりと伝えてくるのじゃよ」
「ボクシム先生…」
優しく頷くボクシム先生の顔を、助けを求めるようにじっと見つめてしまう。
涙を浮かべながら見つめる私に、ボクシム先生は「実桜なら大丈夫じゃ」と言って私の肩に触れると、そのまま屋敷の中へと戻っていった。
(気持ちを伝えると言ってもまだ答えが出せてないのに…)
ひとりになったことで一気に心細くなる。
ヨンウォン皇子の様子を窺うようにチラリと視線を向けると、皇子もチラチラと私に視線を向けながら難しい顔をして私を見ていた。
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