永遠に繋がる萌黄色

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「わかった。わかった。仕方ない。その笑顔を他の男に見せるのは気に食わないが、まあ私は心が広いゆえ、実桜の言うことを聞いてやることにしよう」 「皇子様、心が広いって…。それは皇子様の我が儘です。この国の皇子様がそんな我が儘を言っちゃだめですよ」 呆れたような顔で言い返した私に、皇子は優しく微笑むと麗しい切れ長の瞳を私に向けた。 視線をとらえたまま、私の腰に左手をまわし、グイっと自分の方へ引き寄せる。 ドッキンー。 私の胸が大きな音を立てて、いち早く反応した。 驚いて見つめる私に、皇子の右手が柔らかに私の髪に、耳に、首に、頬に触れる。 腰にまわされている皇子の手に力が入り、ギュッと抱きしめられる。 皇子は麗しい瞳で私を見つめながら口元を緩めた。 「実桜、だがこれだけは絶対に誰にも許さない。実桜は私だけのものだ。この唇に触れていいのは私だけだからな」 色香を含んだ妖艶な皇子の顔がゆっくりと近づいてくる。 目を閉じた瞬間、潤んだ唇が重なった。 優しい優しい口づけ。 これだけで私の身体はとろけてしまう。 その優しく触れていた皇子の唇が、次第に強く、激しく熱を帯びていく。 熱を帯びたその唇に身体の芯が揺さぶられ、心を奪われるようにどんどん酔わされていく。 私は耐えきれず、皇子の背中に手をまわした。 一瞬、皇子の身体がわずかにピクッと震えた気がした。 そして、皇子はそのままさらに私を強く抱きしめると、愛おしむように甘くて深い深い口づけを落とした。 緩やかな風がふわっと舞い、満開に咲いた桜の樹々がそよそよと揺れる。 どこからともなく、桜の花びらがひらひらと舞い落ちてくる。 そんな中で、少し出遅れた桜の樹がほのかに色づいて、ひっそりとつぼみを膨らませ始めていた。 それはまるで目の前の2人を優しく見守るような美しい萌黄色だった。 END
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