予期せぬ再会

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いつの間にか、季節は桜が咲いていた春から若葉が青々と生い茂る初夏へと変わり、私がボクシム先生の屋敷で生活するようになって2か月が過ぎた。 ここでの生活にもだいぶ慣れてきたし、少しずつだけど私にもいろいろなことが分かってきた。 ここはヒョンジョンという王様が統治している 『シンファ』と呼ばれる国で、この周辺の国の中では一番大きな国らしい。 武力、財力、権力、資源ともに備わっているおかげでとても豊かな国で、身分の差はあるけれど国民みんなが平和に暮らしている。 高層ビルやマンションのような近代的な建物なんかは全く無くて。 時代劇のドラマに出てくるような屋敷や長屋が立ち並んでいて、山や木々など緑がいっぱいある穏やかな風景ばかり。 なので当然電車やバス、車なんて走っていなくて、乗り物と言えば、馬や駕籠だけ。 そして、この国にいる人たちはみんな洋服ではなく、貴族のような衣装で生活していて。 まるではるか昔の時代にタイムスリップしたという感じなんだけど。 『シンファ』という名前の国は今まで聞いたこともないし、歴史の授業で習った記憶もないんだよね。 どうして私がここに来てしまったのかは未だに分からないけど、おそらくはるか昔のどこかの国に来てしまったんだろうなと、なんとなく感じてる。 それから私がこの国に来て最初に出会った人たちのこと。 まずは他人の私を全く怪しむことなく迎え入れてくれたボクシム先生。 ボクシム先生はこの国ではとても高名な学者で、昔は王宮や国の教育機関で皇族や書生たちに学問や礼儀を教えていたんだって。 国への忠誠心が深いうえに人望も厚くて、国王や王妃、皇子たちはもちろんのこと、今でもたくさんの人から尊敬されているし、みんなからの信頼が半端なくて。 また、ボクシム先生は学者だけでなくて薬師としての顔も持っていて、今はこの屋敷で薬草を調合しながら薬を作って、病気になった住人たちを助けてあげている。 毎日たくさんの人がボクシム先生を訪ねてきて、先生の調合した薬を受け取って、みんなが次第に元気になっていく姿を見ていると、私までうれしくなってくるし、私が最初に出会ったのがボクシム先生で本当に良かったなと思う。 こんな見ず知らずの私を、自分たちの子供のように可愛がってくれて、ボクシム先生とミランさんには感謝しても感謝しきれないくらい。
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