4094人が本棚に入れています
本棚に追加
「実桜どの、どうですか、都の市場は?」
斜め右上からミンジュンさんの声がする。
振り向くと、そこにはミンジュンさんの甘い笑顔があった。
優しく微笑む彫りの深い端正な顔。
しかも身分が高くエリート官僚だとくれば、この国の女性たちが憧れるのも分かる気がする。
ミンジュンさんがジャニーズにいたら間違いなくトップ3には入るよね。
キムタク? 松潤? 紫耀くん? いや、それより上かも!
「いっぱいお店があって、すごく楽しいです」
たくさんのお店がある市場が楽しすぎて、自然と声が弾んでしまう。
ミンジュンさんは目を細めてうれしそうな顔をして微笑んでいる。
そんなミンジュンさんの足取りが急に止まったと思ったら、いつの間にか目的の薬草屋の前に着いていたようだった。
「実桜どの、ここで薬草を買いますので少し待ってくださいね」
「わぁー、すごい種類。これ全部薬草なんですか?」
薬草屋の前にはいろいろな種類の草や種、根っこのようなものが籠に入れられ、所狭しと置いてあった。
また、籠の中だけでなく、軒につるされている草もある。
その辺にある枯れた草や乾燥した種のようにしか見えないが、これらが全て薬草らしい。
「そうです。でもこれはほんの一部ですよ。薬草は何百種類とありますからね。これはその中でも一般的によく使う薬草なんです」
ミンジュンさんはそう言って私に説明してくれた後、薬草屋の店主に十数種類の薬草の名前を次々と告げた。
薬草屋の店主は籠に入れられた薬草や、店の前に吊るされた薬草を手に取り、どんどん紙に包んでいく。
瞬く間に白い紙に包まれた薬草の包が十数個でき、薬草屋の店主は、それを慣れた手つきで持ちやすいように紐でつないでくれた。
無事に薬草を購入して店主にお礼を言ったあと、私が歩いてきた道の方へ振り返り、屋敷へ戻ろうとすると。
「実桜どの、薬草を買うのを手伝ってくれたお礼がしたいのですが、食事をして帰りませんか? 近くにとてもおいしい食堂があるんです」
ミンジュンさんが、にこやかに微笑みながら私に言った。
最初のコメントを投稿しよう!