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二度目の再会
ボクシム先生が所用で屋敷を留守にしていた日、私は1人で都の市場に向かっていた。
先日ミンジュンさんと薬草を買いに来たときに見つけた宝飾品や雑貨のお店を見てみたかったからだ。
ミランさんに『市場に行く』と言うと気を遣って私と一緒に来てくれるような気がしたので、ミランさんにはその辺を少し散歩してくると言って屋敷を出てきた。
市場は相変わらず活気があり、多くの人たちで賑わっていた。
ミンジュンさんと一緒の時は気づかなかったけど、改めて都の人たちの様子を見ていると、綺麗な服装をしている人もいれば汚れて継ぎはぎをした服を着ている人などもいて、身分の違いが見受けられる。
そんな都の人たちの生活を感じながら、私は見たかった宝飾品のお店を見つけ、さっそく立ち寄ってみることにした。
店の前には花や鳥をモチーフにしたバチ型の簪や、トンボ玉のような輝く玉がついた簪、翡翠やターコイズ、ローズクォーツのような美しい石が施されたブローチやネックレスなど、きらびやかな宝飾品がひとつひとつきれいに並べられていた。
「きゃあー、かわいいー」
並べられた宝飾品をひとつずつゆっくりと見ながら、気になったものは手に取ってみる。
そんな美しい宝飾品を眺めているだけで、私の顔は自然と綻んでいた。
そんな中、ひとつの簪の前で目が留まった。
「あっ、これって」
それは黄緑色の桜の花が付いた一本差しの金色の簪だった。
淡い黄緑色の美しい桜の花が一輪花開き、そこから糸が繋がれ、さくらんぼのような小さな桜桃色の玉が二つ付いてゆらゆらと揺れている。
「これって桜守神社のお守りの桜みたい。すっごく素敵…」
私は自分の首にかけていた黄緑色の桜のお守りを着物の中から取り出した。
この国に来たときに何もかもなくしてしまい、唯一持っていたのはこのお守りだけだった。
せめてこれだけは絶対になくさないようにと、肌身離さず首にかけていたのだ。
「やっぱり似てる。あの時の巫女さん、この桜のこと御衣黄って言ってたっけ。あの桜、綺麗だったなー」
お守りと簪の2つの桜を見比べて確認し、私はなくさないようにと、お守りをまた着物の中にしまった。
そして、惹きつけられるように黄緑色の桜の簪をしばらく眺めていた。
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