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「お前ら何をしている。その女人を放してやれ」
冷たく低い声が静かに響く。
誰かが私が連れ去られるのを制止しようと、ごろつきたちの前に立ちはだかった。
「はぁ? 邪魔するな。部外者は黙っていろ」
リーダー格の男は見下すような目つきで薄ら笑いを浮かべ、その男性に言った。
「黙っていろだと? おとなしく言うことを聞かないと後悔するのはお前たちの方だと思うが」
その男性は『せっかく忠告してやったのに』と言わんばかりに鼻でフンッとあしらいながら、不敵な笑みを浮かべた。
その男性の余裕そうな態度に、ごろつきたちが腰につけていた短剣を手に取った。
「なんだとー、生意気なヤツめ。こいつをさっさとやっちまえ」
リーダー格の男がそう叫んだかと思うと、ごろつきたちが一斉にその男性に襲いかかった。
カチャッ。
鯉口を切る音がしたかと思うと、私を助けてくれようとしているその男性も自分の腰につけていた剣に手をかけ、素早く鞘から剣を抜いた。
なんと、その男性はあのヨンウォン皇子だった。
「せっかく後悔すると忠告してやったのに。言うことを聞かない奴らだな」
ヨンウォン皇子はそう言ってニヤリと笑みを浮かべたかと思うと、鮮やかな剣さばきで襲ってくる男たちの短剣を交わしていく。
ヨンウォン皇子の剣とごろつきたちの短剣が重なり、市場に金属音が響き渡る。
そして、皇子はあっという間に私の前に立ち、ごろつきたちから私が襲われないように自分が盾となった。
少し後ろを振り返りながら小声で私に話しかける。
「おい、あそこの小屋が分かるか?」
皇子は右手に持っている剣をごろつきたちに向け、左手で私の身体をかばいながら、少し離れた小屋を自分の顎で指した。
「はっ、はい。わかります」
「いいか。今から私がこの者たちを左側に引き寄せるから、その間にあの小屋の中に入って隠れていろ。わかったか」
「はっ、はい」
そう言って皇子は3人の男たちを引き寄せるように左側へと移動した。
その瞬間、私は全速力で走って、皇子に言われた小屋の中へと飛び込んだ。
夢中で小屋まで走ってきたのと、ごろつきたちに連れて行かれそうになった恐怖で、心臓がバクバクとかなりの速さで音を立てている。
私は見つからないように急いで小屋の隅っこに隠れ、身を潜めた。
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