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小屋の外では何度も皇子の剣とごろつきたちの短剣が重なる金属音が響いているけれど、外の様子を見ようにも怖くて見ることはできない。
私は恐怖でびくびく震えながら、じっと息を殺し縮こまっていた。
しばらくして、小屋の扉がギィーッと音を立てながら開き、ごろつきたちを追い払ったヨンウォン皇子が小屋の中へと入ってきた。
「おい、大丈夫か?」
小屋の中に入ってきた皇子は、私がどこにいるのかきょろきょろ探しているようだ。
小屋の隅っこに小さく縮こまっていた私は、中に入ってきたのが本当にヨンウォン皇子かどうかを確認してから、ゆっくりと顔を出した。
「はっ、はい…。た、助けていただいてありがとうございました…」
私は皇子の方へ顔を向け、小さな声でお礼を言った。
ところが、まだ先ほどの恐怖から足に力が入らず、立ち上がることができない。
だって。
あんなのはよくテレビで流されている時代劇のドラマの中の出来事であって。
ほんとに目の前で剣の格闘が行われるなんて、そんな世の中ありえないもん。
あんな剣で切られたら一発で死んでしまう。
考えただけで恐ろしくて身震いがする。
皇子は小屋の隅っこにいる私を見つけると、私の目の前まで歩いてきて、そのままその場にしゃがみ込んだ。
そしていきなり私の顎の下に人差し指をかけて、自分の方へクィっと上げた。
「えっ…」
いきなり顔を上げられた私は何が起こったのか分からず、目を見開いて皇子の顔を見る。
「おいお前、ボクシム先生のところにいた女人だな。こんなところで何をしていた?」
私を睨みつけてそう質問するヨンウォン皇子の顔は、明らかに怒っているようだ。
だけど。
私はこんなにも間近で男の人の顔を見るのは初めてで。
ちっ、近い…。
皇子が怒っていることよりも、皇子との顔との距離が近すぎて、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
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