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そうかもしれないけど…。
確かにそうかもしれないけど…。
でも知らなかったんだから、そんなに怒って言わなくてもいいじゃん…。
私は不機嫌な顔をして冷たく言い放つ皇子に対して涙が出そうになりながら、段々と腹が立ってきた。
ただ、お店を見に来ていただけなのに。
市場にひとりでくることが危ないなんて知らなかっただけなのに。
どうしてこんなにも怒られなきゃいけないんだろう。
涙がこぼれ落ちそうなのを必死に我慢しながら、私は皇子の顔を睨みつけるようにして口を開いた。
「あっ、あの、助けていただいたことにはとても感謝していますが、そんなに怒らなくてもいいんじゃないですか!」
「なんだと? せっかく助けてやったのになんて言いぐさだ」
「だってそうでしょ。市場にひとりで来たら危ないなんて私は知らなかっただけなのに。そんなに怒って言わなくてもいいんじゃないですか。もう少し他人に対しての言い方ってものがあると思います!」
皇子を睨みつけている瞳から、涙がポロリと零れる。
私は零れた涙を隠すようにしてフンッと首を横に振り、そっぽを向いた。
「言い方だと?」
「そうです。だいたい皇子様のくせに習わなかったんですか? 言葉遣いはきちんとしましょう、他人には優しくしましょう、相手に不快な思いはさせないようにしましょうって! 人間としての基本でしょ。小さい子でも知ってることじゃないですか!」
「人間としての基本だと?」
「そうです。基本です。あなたはこの国の皇子なんですよね。せっかく助けてもらっても、そんな言い方されると嫌な気持ちしか残らない!」
そう言い返しながら、私の瞳からはポロポロと涙が溢れてきた。
なんなの全く…。
この皇子、ほんと最低。
こんな人がこの国の皇子だなんて。
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