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「ほんとにいいのか? ここにはもう1人では来れないのだぞ」
ヨンウォン皇子にそう言われ、私に少し迷いが生じた。
ヨンウォン皇子とは一刻でも早く離れたいんだけれど。
でも、あの桜の簪や他の宝飾品をもう一度じっくり見てみたい。
もし次にここに来るとなればミンジュンさんにお願いしないといけなくなるし。
優しいミンジュンさんならきっと快諾してくれそうだけど、見るだけのためにそんなことをお願いするのは気が引けてしまう。
あー、どうしよう。悩む…。
心の中で自問自答しながら悩んだ結果、
「じゃあ、少しだけ…、見てもいいですか…?」
私はうつむきながら、皇子に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で言った。
ヨンウォン皇子は何も言わず、少し口角を上げて、どうぞと言わんばかりに右手を店の方へと向けた。
私は嬉しさでにやけてしまいそうな顔を必死で我慢しながら、店の前に並べてある簪や宝飾品をじっくりと見始めた。
先ほど見た宝飾品の他に、華やかな輝きを放つ石がたくさんついた蝶々の宝飾品や、虹色のグラデーションが美しい三日月型の首飾り、ほんの少しグリーンがかったブルーのターコイズと優しいピンクのローズクォーツや透明な水晶が連なった腕輪などがまた新たに並んでいる。
ひとつひとつが繊細でとても美しく、細部にわたり繊麗な細工が施され、鮮やかな色合いがなんとも言えない。
あー、溜息が出てしまうくらいほんと綺麗だ。
でも、何度見てもさっき見た淡い黄緑色の桜とさくらんぼのような玉がついた簪にどうしても心が惹きつけられてしまう。
髪の毛をアップしてこれを頭につけたら可愛いだろうな。
私はその簪を手に取り、ゆらゆらと桜の花を揺らしながらじっと眺めていた。
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