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「皇子様、どうもありがとうございました。もう大丈夫です」
私はヨンウォン皇子の前に行き、無表情のままお礼を言い、頭を下げた。
ほんとは笑顔でお礼を言わなくちゃいけないんだけれど。
やっぱり癪だし。
「あの簪が気に入ったのではないのか? かなり熱心に見ていたではないか? 買わなくてよいのか?」
何も購入せず戻ってきた私に、ヨンウォン皇子が尋ねる。
「はい。お金持ってないですし」
「はぁ? お金を持っていないだと? お金を持っていないのにここまで来たのか?」
「はい。そうですけど」
私はコクリと小さく頷いた。
「買うつもりもなくここに来たと言うのか?」
「はい。どんなのがあるか見てみたかったから来ただけです」
「意味がわからない」
ヨンウォン皇子は驚いた顔をしながら、私のやっていることがちっともわからないといった表情で左右に首を振った。
「そうですか? 見るだけでも十分楽しいですけど」
「お金を持っていないなら私が買ってやってもいいぞ」
「いえ大丈夫です。欲しいときは自分で買います」
私は左右に首を振りながら、毅然とした態度で答えた。
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