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「ところで実桜さま、その2本の指は何かしら?」
「えっ?」
あっ、しまった。
思わずVサインなんかしちゃった。
気をつけてたのに…。
この国に来て以来、私はみんなと同じように敬語を使い、普段友達と話していたような現代語を使わないように気をつけていたのだけれど、油断するとついつい現代の言葉や動作が出てしまう。
「あっ、これはですね。私に任せてくださいっていう意味でやっただけで…。うれしい時とか頑張るときにするカタチっていうか…」
「へぇー、そうなの。そういう意味の指のカタチがあるのね」
皇女は両手でVサインを作り、楽しそうに指を動かしながら自分の両手眺めていた。
あー、気を抜くとどうしても普段使ってた言葉や動作がでちゃうな。
もっと気をつけなきゃ。
「ねぇ、実桜さまはお好きな方はいらっしゃらないの?」
「わっ、私ですか?」
急に皇女に聞かれた私は、びっくりして目を見開いた。
そういえばこの国に来てからここで生活することが精一杯で、好きな人なんて考える余裕もなかった。
好きな人ができないかなーとあれだけ神様にまでお願いしていたのに…。
そんな自分の状態にあらためて気づき、クスッと笑いながら私はサラ皇女の方に顔を向けた。
「残念ですがそんな風に思える人はいなくて…。私も皇女様みたいに好きだと思える人が早くほしいです」
「そうなのね。残念だわ。じゃあ、ソユン様は? ソユン様はお好きな方はいらっしゃらないの?」
皇女が今度はソユンさんの方を向いて尋ねる。
「えっ、私ですか? 特には…」
ソユンさんは慌てて視線を下に向けて、うつむきながら小さく首を横に振った。
「なぁんだ。お2人ともお好きな方がいらっしゃらないのね」
サラ皇女ががっかりしたように口を尖らせた。
明るかった空気に少しどんよりとした雲がかかる。
私は皇女の方を向き、少し沈んでしまった空気が明るくなるように言った。
「皇女様。では私に好きな人ができたら皇女様とソユンさんにすぐにご相談しますから、お話し聞いてくださいね」
「ほんと? 実桜さま。約束よ」
サラ皇女の顔が嬉しそうな明るい表情にぱっと変わる。
「はい。ねっ、ソユンさん」
私はサラ皇女に頷きながら、同意を求めるようにソユンさんの方を向いた。
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