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「わかった。では、この女人が私の命を助けてくれたのだな?」
「はい。そのように存じます」
「では、もうひとつ聞く。この女人が私の口から息を吹き込み呪いをかけたとこの大将は言っておるが、私は呪いをかけられているのか?」
「いいえ。皇子様の身体には呪いなどかけられておりません。この女人が皇子様の口から息を吹き込んだのは、おそらく皇子様の呼吸を起こすためだと思われます。
普通は鍼で呼吸を起こしますが、器具などを使用し、口から空気を入れて呼吸を起こす方法もございます。これは主に異国で使用されている方法でございます。わが国では鍼で呼吸を起こす方法を使用しているため、口から空気を入れて呼吸を起こす方法は、ほとんど知られておりません。また、この方法が書かれている医学書も少ないため、医官の中でも知っている者はほぼいないと思います。
今回はそういった器具がなかったため、この女人は自分の口から息を吹き込んで皇子様の呼吸を起こしたのだと思われます。この女人がどうしてそのような方法を知っていたのかはわかりませんが、この女人のおかげで皇子様の命が助かったのは事実でございます」
医官長はまっすぐにヨンウォン皇子の顔を見つめながら、真剣な表情で答えた。
皇子はゆっくりと大きく頷きながら、武官の大将の方へ向いた。
「医官長はこのように申しておるが、まだこの女人が呪いをかけたと疑い、無実の者に罪を着せるつもりか?」
「い、いえ…。申し訳ございません…」
武官の大将は表情を歪め、顔を引きつらせながら頭を下げた。
(わたし…、た…、助かった…みたい…)
やっとこの尋問から解放されることに安心した途端、私は意識を失ってしまった。
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