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「なんか…、薬草を当てたところが冷たいです…」
私は窺うように医官長の顔を見る。
「身体が冷たく感じられますか? それはこの薬草が効いている証拠です。しばらくは痛みと腫れが続くと思いますが、この薬草で身体の腫れが引いていき、肌の色が元の色に戻ってまいります。完治するまではしばらく時間がかかりますが、もう大丈夫ですのでご安心ください」
医官長は少し辛そうな顔をしながら説明してくれた。
「この肌の色…、ほんとに前のように元に戻るんですか?」
「はい。戻りますのでどうぞご安心ください」
医官長は優しく微笑みながら頷いた。
「元に戻るんだ…。良かった…。治療していただきましてありがとうございます…」
私はゆっくりと頭を下げながら医官長と2人の医女にお礼を言った。
ちょうど治療が終わったところに、ヨンウォン皇子が部屋へと戻ってきた。
「医官長、実桜の身体はどうだ? どんな具合だ?」
皇子は急いで戻ってきたのか、はあはあと少し息があがっている。
「はい。もう大丈夫でございます、皇子様」
医官長はヨンウォン皇子の顔をしっかりと見つめ、大きく頷いた。
「本当か? 本当にもう大丈夫なのか?」
「はい、皇子様。完治するまではまだしばらく時間はかかりますが、そのうち腫れも引いていき、肌の色も元の通りに戻ってまいります。ですのでどうぞご安心ください。ただ、薬草は毎日変えることと、当面の間は絶対に無理をせず、しっかりと身体を休ませねばなりません」
「本当に身体の傷も治り、肌の色もきちんと元通りに戻るのだな?」
「はい。さようでございます」
「わかった。医官長、治療をしてもらった礼を言う」
そう言ってヨンウォン皇子は真剣な顔をして医官長にお礼を言った。
「とんでもございません、皇子様」
医官長はとても恐縮しながら深々と頭を下げる。
「それで、治療はまだかかるのか?」
「いえ、先ほど終了致しました」
「そうか、では治療が終わったのならもう下がってよいぞ」
「かしこまりました。皇子様」
医官長と2人の医女はヨンウォン皇子にもう一度頭を下げると、部屋から出て行った。
医官長と医女が部屋から出て行ったのを確認してから、ヨンウォン皇子は私の前に来て、静かに腰を下ろした。
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