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「ところで実桜が私を助けてくれたそうだが、実桜は医術の心得があるのか?」
皇子の問いかけに、私は頭に添えていた手を外し、再びヨンウォン皇子に視線を向けた。
そしてゆっくりと左右に首を振った。
「だが医官長が言うには、異国の方法で私を助けてくれたということだが…」
皇子が尋ねるような顔をして私を見る。
私は皇子に心臓マッサージをした時のことを思い浮かべながら口を開いた。
「それは授業で習った心臓マッサージと人工呼吸しただけです。あんなときに医官長を待っていたら、皇子様が助からないと思ったから…」
「授業? 心臓まっ…。まっさ…? じんこうこきゅう?」
皇子が『んんっ?』 といった表情で、私の言葉を聞き返した。
「あっ、あのー、えっと…、学問で習得した心臓の…うーん…、指圧治療っていうのかな? 人工呼吸は…、えっと…、息をしていない人に…、人工的に空気の供給をするっていうか…」
「心臓の指圧治療に、人工的な空気の供給…?」
皇子は首を傾けながら、私が言った言葉を理解しようと考えているようだった。
「心臓の指圧治療というのはなんとなく分かったが、人工的な空気の供給とは実桜が私にした口づけのことか?」
「えっ…?」
驚いて目がパチクリと大きく開く。
私は口をポカンと開けたまま、皇子の顔を見た。
そしてすぐさま慌てて声を出した。
「くっ、口づけ…? おっ、皇子様何を言ってるんですか?」
あまりにもびっくりしすぎてしまい、声が裏返っている。
「違うのか?」
「ちっ、違います。絶対に違います。ちゃんとした治療です。もう変なこと言わないでください」
私はきっぱりと否定しながら、ゴホゴホとむせ込んだ。
瞬く間に自分の顔がカーッと赤くなってくるのが分かる。
わぁー。わぁー。
口づけって、キっ、キスってことだよね…。
そ、そうだ…。人工呼吸とはいえ、私、ヨンウォン皇子とキス…したんだ…。
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