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唇に手を当てて、ヨンウォン皇子を助けたときのことを思い浮かべる。
心臓がドクンドクンと跳ね上がっている。
(もしかしてこれって…私のファーストキス…?)
(こんなカタチでしてしまうなんて…)
(あー、なんてことだー)
(ううん、違う違う。絶対に違う。これは人工呼吸だから、キスには入らないってば…)
(絶対にキスには入らない!)
「どうした実桜? 私との口づけを思い出しているのか?」
眉間に皺を寄せて、唇に両手を当て、急に固まってしまった私を見て、ヨンウォン皇子が意地悪っぽくニヤッと笑みを浮かべた。
「えっ、違います。絶対に違います!」
「今度は普通にここでしてやってもいいぞ」
「も、もう、そうじゃありません!」
皇子はいたずらっぽい目をして微笑みながら、私の顔をじっと見つめている。
そして。
「実桜…」
皇子が私の名前を呼んだ。
優しく響く甘くて低い声。
妖艶な切れ長の瞳に見つめられ、胸の奥がキューンと響き、身体がゾクッと反応する。
ヨンウォン皇子はその艶っぽい瞳で私の視線をとらえたまま、首を傾けてキスをするようにゆっくりと自分の顔を近づけてきた。
美しく麗しい皇子の顔がどんどん私の顔に近づいてくる。
バクバクバクバクー。
恐るべきスピードで私の心臓の動きは早くなり、音が激しさを増していく。
(ど、どうしよう…)
(ほんとに、キ…キスされちゃう…)
私は顔を近づけてくるヨンウォン皇子から、ゆっくりと自分の顔を後ろに遠ざけていった。
皇子は余裕な笑みを浮かべている。
明らかに皇子の表情は、私が困っている姿を見て楽しんでいるようだ。
「もう、皇子様! 本当に…、本当に違います!」
私は手の甲で自分の顔を隠すようにして、ヨンウォン皇子の顔が近付いてくるのを制止した。
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