想定外のキス

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「皇子様、ミンジュン様が来られました」 扉の外にいる内官の声がドア越しに聞こえてきた。 「ああそうか。通してくれ」 私のドキドキとは裏腹に、ヨンウォン皇子は何事もなかったかのようにサラリと内官に返事をした。 そして皇子はそのまま何もすることなく私を起こしてくれた。 (あー、びっくりした) (ほんとにキスされるかと思った…) 心臓がまだドキドキしてる。 私は目を大きく見開いたまま、両手を胸にあてて小さく息を吐いた。 私が呼吸を整えていると、皇子の部屋の扉が開き、ミンジュンさんが中へと入ってきた。 ミンジュンさんはヨンウォン皇子の顔を見て軽く頷いたかと思うと、すぐに私のそばにやってきて座った。 「実桜どの、大丈夫ですか」 両手で私の手を優しく握り、悲痛な表情を浮かべて私の顔を見る。 「大丈夫です。ヨンウォン皇子様が助けてくださり、医官長様に治療もしていただきました」 「ああ、よかった。本当によかった。ヨンウォン、実桜どのを助けてくれてありがとう」 ミンジュンさんは安心したように、大きく息を吐きながらヨンウォン皇子にお礼を言った。 「いや、私のせいでこんな目に合わせてしまったのだ。こんなことになる前に、もっと早く助けるべきだったのだが…。実桜には本当に申し訳ないことをした」 皇子が申し訳なさそうに首を横に振る。 そんな皇子にミンジュンさんは、 「でも本当に無事でよかった。ヨンウォン、あとは私が実桜どのの手当てをするから」 と、軽やかに告げた。 そして今度は私の方を向いて、 「実桜どの、ボクシム先生もミランさんも心配してらっしゃいます。駕籠を用意してきましたので、一緒にボクシム先生の屋敷へ帰りましょう」 と、ニッコリと優しい笑顔を向けた。
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