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「これはヨンウォン皇子様」
ボクシム先生がニッコリと温かい笑みを浮かべながら、ヨンウォン皇子に丁寧に頭を下げる。
「ボクシム先生、ご無沙汰しております」
ヨンウォン皇子もボクシム先生にきちんと頭を下げ、挨拶をした。
そして改めて真剣な表情でボクシム先生の顔を見ながら、
「先生、この度は私のせいで実桜を大変な目に遭わせてしまい、本当に申し訳ございませんでした。もっと早く実桜の身体の状態を伺いにくるべきでしたが、隣国からの使節団の来訪で王宮での政務に追われてまして、本日になってしまいました。ご迷惑をお掛けしたうえに、先生やミランさんには大変辛い思いをさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
ヨンウォン皇子はそう謝罪をし、深々と頭を下げた。
「皇子様、どうぞ頭をお上げください」
ボクシム先生がヨンウォン皇子の両肩に手を添え、頭を上げるように促す。
皇子がゆっくりと頭を上げると、ボクシム先生は優しい笑顔を浮かべ、目を細めながら口を開いた。
「今回のことは決して皇子様のせいではございません。いろいろと行き違いがあったのでしょう。確かにここに戻ってきた時の実桜の身体は本当に心苦しい状態でしたが、今は少しずつ良くなってきております。ですのでどうぞご安心ください。それに実桜は本当に心根の優しいしっかりとした女人です。そんな実桜が皇子様を助けたと聞いて、私たち夫婦は心から嬉しく思っております」
ボクシム先生は優しくヨンウォン皇子の顔を見て、何度も頷く。
「ボクシム先生…。そのように言っていただきまして、本当にありがとうございます」
ヨンウォン皇子は再び深々と頭を下げた。
私はそんなボクシム先生とヨンウォン皇子を見ながらじんわりと胸が熱くなり、とても穏やかな気持ちになっていた。
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