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「ところでボクシム先生、これから少し実桜をお借りしてもよろしいでしょうか?」
ヨンウォン皇子が唐突にボクシム先生に尋ねた。
「それは大丈夫ですが」
ボクシム先生が少しびっくりしたような顔をして答える。
「では夕方には屋敷に送り届けますので、少し実桜をお借り致します」
いきなりそんなことを言い出した皇子に、私は驚いて目をパチクリさせながら2人の顔を交互に見た。
そんな私を2人は全く気にすることなく、
「分かりました。では皇子様、お気をつけて」
ボクシム先生は和やかな笑みを浮かべながらそう言い、
ヨンウォン皇子も
「では先生、失礼致します」
と言って頭を下げた。
私はどうしたらよいのか分からず、2人の顔を見ながらきょろきょろとしていると、ボクシム先生がにっこりと微笑みながら「実桜、気をつけて行っておいで」と言って私が手に持っていた桃を受け取り、そのまま屋敷の中へと戻って行った。
(えええーっ?)
ひとり残された私は、ゆっくりと皇子の方へと視線を向ける。
ヨンウォン皇子は少し微笑んだかと思うと、眉を寄せ、私を気遣うように口を開いた。
「これから少し外出するが身体はまだ痛むか?」
「少し痛みはありますけど大丈夫です。それより外出ってどこへですか?」
「ある場所だ」
「ある場所ってどこですか?」
「では馬に乗るぞ」
皇子は私の質問には答えてくれず、皇子の乗ってきた馬に乗るように促した。
「えっ、馬なんて乗ったことないから乗れない」
私はブンブンと首を横に振る。
するとヨンウォン皇子は颯爽と馬に飛び乗り、
「ここに左足を掛けれるか?」
と、馬の左側の鐙を指さした。
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