恋が始まる瞬間

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「すみません。そんなつもりで言ったのではなかったんですけど…」 申し訳なさそうに謝る私に、ヨンウォン皇子は穏やかに首を振りながら、 「しっかり陽射しを浴びて、存分にここの空気を吸ったらいい」 と、なんとも言えない麗しい笑みを浮かべた。 そんな皇子の麗しい笑みに見つめられ、私の心臓がドキンと跳ねる。 「あっ、ありがとうございます。皇子様、あっ、あの大きな木のところまで行ってもいいですか?」 私は慌てて皇子から視線をそらし、多くの木々が重なっている高台の方を指さした。 「別に構わぬが。そんなに歩いて身体は大丈夫なのか?」 「はい。大丈夫です」 私は小さく頷くと、そそくさと皇子に背を向けて高台にある木の方へ向かって歩き始めた。 ヨンウォン皇子も私の後ろからついて来ている。 歩きながらさっきの皇子の麗しい笑顔を思い出し、再び胸の奥がキュンと響く。 (イケメンな顔してあんな麗しい顔で見つめないでよねー) (ドキドキするじゃん) 私は後ろから歩いてくる皇子の存在を背中で感じながら、高台を目指して歩いて行った。 高台からみる景色はまた壮観で、斜面一面に広がるラベンダーは、薄紫、紫、濃紫…とグラデーションになっていて、さらに美しさを増していた。 私は皇子と一緒に木陰に腰を下ろした。 爽やかな風がスッーっと通り抜け、ふわっとラベンダーの心地よい香りが漂う。 まるで天然のアロマシャワーを浴びているようだ。 すると、ヨンウォン皇子がラベンダー畑の方に視線を向けたまま、静かに口を開いた。 「この間は悪かった。私のことを助けてくれたのに辛い目に合わせてしまい、本当に申し訳ない」 「もう謝らないでください。皇子様が助けてくれたおかげで私もこうして元気になりました。それにボクシム先生も言われていたように、これは皇子様のせいではありませんから。本当に大丈夫です」 私は皇子の方を向いて「もう大丈夫です」と左右に首を振ると、皇子はゆっくりと私の方を向き、無言で優しく微笑んだ。
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