おみくじのお告げ

8/11

4033人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
私はその桜の花のお守りを手に取った。 黄緑色の花びらは、太陽の光に反射してキラキラと煌き、桜の優しさを一段と醸し出している。 (わっ、すっごくきれい) 『愛の石』の翠玉と『永遠の愛』の桜。 好きな人もいない私には、『愛』なんて恥ずかしくて、大人すぎて、まだまだ遠い未来のことだ。 『愛』の前に、まずは『恋』だよね! 今の私には、まだこのお守りは早いのかな。 私は手に持っていたそのお守りを戻そうとした。 だけど、なぜかこの淡い黄緑色をした桜に、どうしても心が惹かれてしまう。 愛の石に永遠の愛という願いが込められたお守りなんて、こんなお守りを持っていたら最強なのかもしれない。 それに、こんな最強のお守りを毎日つけていたら、すぐに好きな人ができるかもしれない。 そう思い直した私は、手に持っていたその桜のお守りを戻さず、巫女さんに渡した。 「これをください」 「はい。このお守りですね。こちらは千円のお納めになります」 巫女さんは目を細めてとても穏やかに微笑んだ。 お財布から千円札を渡すと、巫女さんはこちらもどうぞと言って、お守りと一緒に淡い黄緑色の桜の形をした飴をくれた。 「こちらの飴は縁結びの祈祷をされている飴ですので、どうぞ召し上がってくださいね。それと、今ちょうどこの奥にある本殿の裏側にこのお守りと同じ御衣黄がきれいに咲いていますので、せっかくですから御衣黄のお花もぜひ見て帰られてくださいね」 巫女さんはそう言ってその桜があるという方向へ手のひらを向けた。 「ありがとうございます」 改めて巫女さんにお礼を言ったあと、私は授与所にいる巫女さんから見えない場所に移動して、今買ったばかりの桜のお守りを袋から出して首にかけた。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4033人が本棚に入れています
本棚に追加