恋が始まる瞬間

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しばらく沈黙が続いた後、再びヨンウォン皇子が口を開いた。 「ところで実桜、この薫衣草を見ておかしな名を言っておったな?」 「くんいそう? このお花、薫衣草って言うんですか? 私はてっきりラベンダーだと思ってました」 「らべんだー? この花は薫衣草と呼ばれているが。眠れないときはこの薫衣草を寝所に置くとよく眠れると言われている花だ」 「じゃあやっぱりラベンダーだ。ラベンダーの香りは安眠効果があるって言われているから。ラベンダーのこと薫衣草って言うんだ」 私はふうんと感心するように大きく頷いた。 大きく頷きながら感心している私に、ヨンウォン皇子が再び尋ねた。 「実桜は時々分からない言葉を使っておるな。この薫衣草といい、先ほどもデートとかなんとか言っておったな。 この間の心臓の指圧治療や人工的な空気の供給のことといい、そう言えば妓楼のことも知らないと言っておったな。ボクシム先生の遠戚だと言っておったが、どこの地方の出身だ?」 「……………」 私は答えることができず、自然と顔が下に向いてしまう。 私が急に黙りこくってしまったので、皇子は窺うように私の顔を覗き込んだ。 皇子の顔をチラッと見ると、私を疑うとかそういう感じではなく、自然な疑問として聞いてきているようだった。 「そ、そうじゃなくて…」 答える声が小さくなる。 (ヨンウォン皇子に話しても大丈夫かな) (ソンヨルさんは皇子のこと信頼できて心が温かい人だって言ってたけど…) (私の言うこと信じてくれるかな…) 私はこの国に来た経緯をヨンウォン皇子に話していいものかどうか迷っていた。 だけど、今までいろいろと助けてくれたヨンウォン皇子に嘘をつくことはしたくなかった。 そして、ゴクリと唾を飲み込み、ふうーと大きく息を吐いた。 「私がいた場所はここと全く違う場所だから…だと思います」 「どういうことだ?」 皇子が、んんっ?と首を傾げる。 「皇子様、私はこの国の人間ではありません。日本という国から来ました」 私は皇子の方を向き、しっかりと目を見て、真剣な顔で言った。
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