恋が始まる瞬間

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「日本?」 「はい、日本です。どういう理由かわからないけど、この国に来てしまったみたいで。そう、あの時、桜の樹の下で皇子様を見たときです。その時に気を失ってしまって。気づいたらこの国にいました」 「では実桜はシンファの国の者ではなく、日本という国から来たのか?」 私は皇子の目を見たまま頷いた。 「そのような国は聞いたことがない。それに今までいろいろな書物を読んできたが、書物にも日本という国の名は見たことがない」 「そうみたいですね。それはボクシム先生とミンジュンさんから教えてもらいました。この国に来たときに初めて会ったのがボクシム先生とミンジュンさんで、私の話を聞いたボクシム先生が、どこにも行く場所も帰る場所もない私を屋敷へ迎え入れてくださいました。なので私はボクシム先生の遠戚ではないんです」 「だから時々わからない言葉を使っておったり、異国で使われている呼吸を起こす方法も知っておったのか」 「そうです」 そう答えると、私は視線を下に落とした。 私の話を聞いたヨンウォン皇子は黙り込み、何かを考えているようだ。 そして「んんっ?」と何かを思い出したように声を発した。 「実桜、そういえば先ほど桜の樹の下で私を見たと言ったな」 「はい。黄緑色の桜の樹の下で皇子様を見ました。皇子様が 『何を見ているんだ!』って私を睨まれましたよね?」 「確かにそう言ったが、私は桜の樹の下では言ってないぞ」 「えっ? どういうことですか? あの日、桜の樹の下で琴を弾いてらっしゃいましたよね。可愛い女の人が隣にいて」 「いや。そんなことはしておらぬ。私は母上の墓前にいたのだ。それに私は女人などと一緒にいない」 「うそ…。その女の人に冷たく言われてたじゃないですか? 誰とも婚姻しない。何が目的だ? とか」 「そんな女人は知らないしそんなことも言っておらぬ。私が母上の墓前にいたら、見たこともない女人がこちらを見ていたから何者だと叫んだのだ。その瞬間、実桜はすぐに消えてしまったではないか。あのあと怪しい者だと思いその周辺を探したのだが、全く見つからなかったのだ」 「えっ、どういうこと? 私が見たことと全然違う…」 私は桜の樹の下でヨンウォン皇子を見たのに、皇子はお母さんのお墓の前で私を見たと言う。 皇子との食い違う話に、私はどういうことなのかさっぱりわからなかった。
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