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岩穴の中に入った私の心臓はドクンドクンととても大きな音を立てて鳴り響いていた。
「あ、雨…、すぐに止みますかね?」
抱きしめられたことで皇子を意識してしまうせいか、緊張で声が裏返る。
「そうだな。すぐに止むと思うが」
皇子は空の様子を窺いながら、何事もなかったかのようにサラリと普通に答えた。
(私はこんなに緊張してるっていうのに…)
(皇子は全然緊張しないんだ…)
(こんなこといつも普通に女性にしてるから緊張しないのかな)
なんとなく寂しいような、がっかりしたような気持ちになりながら、私は緊張しているのを悟られないように岩穴から空を見上げた。
*****
一方、ヨンウォンは隣で空の様子を窺っている実桜をチラッと見た。
空を見上げながら、濡れた着物が身体に張り付かないようパタパタと一生懸命水滴を振りはらっている。
チラチラと着物の隙間から見える紫色の腕がまだ痛々しく、その傷の状態に心がキューっと締め付けられてしまう。
(肌の色があんなに紫色になってしまって)
(まだかなり痛むだろうに)
急に降り出した雨のせいで実桜の長い髪の毛は濡れ、ポタポタと落ちた滴が首筋に流れていた。
雨に濡れた実桜の姿は艶っぽく、ヨンウォンは心臓がドキンと波立つのを感じて慌てて目をそらした。
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