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「王宮という場所はいろいろと利害が絡む場所であってな。皇子の婚姻ともなれば必然的に豪族の娘が候補にあがるのだ。豪族の娘と婚姻するとなると、相手の親族と姻戚関係を結ぶようになる。そうなると豪族たちは自分たちの権力を拡大しようと考え始めるのだ」
「権力を拡大することは強い国になるし、王宮にとっても皇子様にとってもいいことではないのですか?」
「この国の王であればそれは権力があるに越したことはない。だが私は第二皇子だ。兄上がいる。兄上が次期国王だと言われているのに、私がもし豪族の娘と婚姻し、その親族がさらに権力を拡大しようと考え始めるとどうなる? 皇室内で争いが起こるであろう」
「どうして争いが起こるのですか?」
「豪族たちは自分たちの権力を揺るぎないものにしようとするために兄上を失脚させようと画策し、私を国王にしようと考え始めるからだ。それが今までの皇室の歴史であり、王宮とはそういうところなのだ。だから私は争いを避けるため婚姻はしないと決めているのだ」
「そしたら皇子様はこの先もずっとひとりでいるってこと?」
「まあそのつもりだ。ソンヨルやミンジュンもいるし、内官たちもいるからな」
皇子はそう言って目を細め、遠くを見ながら小さく頷いた。
「でもそれって。皇子様の幸せは?」
「私の幸せ?」
皇子は眉を寄せ、質問するように私の方へ視線を向けた。
「そう。皇子様の幸せです。ソンヨルさんやミンジュンさん、ボクシム先生や内官の人たちはこれからもずっと皇子様のそばにいてくれると思うけど、でも皇子様が安らいだり愚痴を言ったり、相談したり甘えたり…、そういう場所って必要なんじゃないですか?」
「…………」
「皇子様が皇室のことを考えているのはすごくよくわかるけど。だけど皇子様が犠牲になることはないと思う」
「私は犠牲になっているとは思っていないぞ」
「そうかもしれないけど。だけどソンヨルさんやミンジュンさんたちに言えないことってあると思うんです。そんなことを聞いてくれる人とか、弱い自分を見せられる人とか、辛いときにそばにいてくれる人って必要だと思うから」
「それがソンヨルやミンジュンではなく、女人だというのか?」
私はヨンウォン皇子の顔をじっと見ながらコクンと頷いた。
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