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予期せぬ再会
知り合いも全くいない、帰る場所もない、どこにも行くあてがない見ず知らずの私を、ボクシム先生と呼ばれるおじいさんはこの屋敷に迎え入れてくれた。
とにかくここに来た当初は不安と恐怖しかなくて、何も考えることができず、ただただ泣いてばかりの毎日で。
ボクシム先生やボクシム先生の奥さんには相当迷惑をかけていたと思う。
毎日泣きながら塞ぎこみ食事も取らない私を、2人は温かく見守ってくれ、自分たちの娘のように本当に心配してくれた。
特に奥さんのミランさんは私の不安が少しでも和らぐようにと、ずっとそばに寄り添っていてくれて。
そのおかげで、私は今の現実を少しずつ受け入れることができるようになっていくことができた。
今はこの屋敷でボクシム先生の仕事を手伝いながら、ここに尋ねてくる人たちとお話したり、お世話をしたり、そんな生活を送る毎日を過ごしている。
なぜだか分からないけど、私はこの日本ではない異国の地で、ボクシム先生に会った時からこの国の言葉で話をして、理解できるようになっていて。
自分では今まで通り日本語を話しているつもりなんだけど。
どうやらこの国では私が話す言葉はシンファの国の言葉として聞こえているみたい。
なんでなんだろう?
その理由は全く分からないけど、もし1つだけ考えられるとしたら、あの巫女さんからもらった桜の形をした緑色の飴を食べたことかな。
今まで食べたことがない不思議な味がした飴だったし。
とにかく、この国で使う言葉と文字には不自由することなく過ごせているのが、今はほんとに唯一の救いだった。
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