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初めての市場
この屋敷で皇子に会って以来、皇子がまたこの屋敷に来たらどうしようと私は毎日びくびくしていたのだけれど。
そんなことは全くの杞憂で。
皇子はあの日以降この屋敷に来ることはなかった。
あの皇子とはどんな人なのか?
私は夕食の支度を手伝っている時に、さりげなくミランさんに聞いてみることにした。
「ミランさん、この間皇子様がここに来られたんですけど、皇子様ってどんな人なんですか?」
「皇子様? どちらの皇子様のことかしら?」
ミランさんは「んっ?」と首を傾げて私に聞き返した。
「どちらの皇子様って私は分からないんですけど、皇子様と一緒にもう1人男性がいらっしゃって、2人ともミンジュンさんとお友達のようでした」
「ミンジュンとお友達? あー、それならヨンウォン皇子様とソンヨルね」
ミランさんはうんうんと納得したように頷いた。
「あっ、そうです。そういえば、皆さんヨンウォンと呼ばれていました」
「ヨンウォン皇子様はこの国の第二皇子様でね。ヒョンジョン国王の側室(第二夫人)の息子なの。ヨンウォン皇子様とミンジュン、そして皇子様の護衛武官のソンヨルは一緒に武芸の修練をしてきたこともあって、昔からとっても仲が良くてね。まあ3人とも同じ年齢っていうこともあるんだけど。だからよく3人で集まって食事をしたりお酒を飲んだりしているみたいよ」
そう言ってミランさんはいい香りがしてきたお味噌汁を少し小皿に入れて味見をした後、少し味が薄かったのか甕の中から杓子で少し味噌を取り、鍋の中に足した。
「そうなんですね。皇子様と一緒にいた方は護衛武官の方だったんだ」
「そう、ソンヨルは武芸の腕がとっても優れていてね。国の武芸大会で優勝したことがあるくらい卓越した武芸の持ち主なの」
「ソンヨルさんってそんなにすごいんだ。だから皇子様の護衛武官をされてるんですねー」
私はあの若紫色の衣装を着た男性の顔を思い出していた。
塩顔の寡黙でクールなイケメンといった感じの男性だ。
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