水と女神

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水と女神

 その日、僕は、下駄箱の手紙で二階から屋上へいく階段の踊り場に呼び出された。  屋上は施錠されているので普段ここには人はこない。  予想通り、呼び出したのは下級生の女の子だった。  少し気の強そうなその子は中学生のくせに化粧している。  『なんだ。この学校の先生は僕がマンガを持ってきたら怒るくせに化粧は良いのかよ』  そう思うと少し腹がたってきた。  いつもはトラブルを避けるため、丁寧に応対するのだが。  「原田先輩。このあいだの大会、すっごく格好良かったです。一目惚れしちゃいました。どうか付き合って下さい」  「ゴメン、僕は化粧するような女は大嫌いなんだ。二度と目の前に現れないでくれる」  ワナワナと震え、下を向いているその子を置き去りにして、階段を下ろうとした瞬間、後ろからドンと強く押された。あまりの強さに身体が自然と反ひねりになる。  ショルダーアタックだった。  僕は後ろ向きという最悪の姿勢のまま階段を落ち、そのあとを女の子が落ちてくる。  とっさに女の子を庇おうとするのは、男としての本能だ。  幸い、三歩下がっただけで壁にあたった。     
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