水と女神

2/2
前へ
/4ページ
次へ
 「ヨシッ」と思ったのも束の間、今度はその女の子に両手で、胸を押された。  『これだから女ってのは・・・』  窓枠を超えた僕に青空が一瞬だけ見え、次にプールが見えた。  『まずい、頭から落ちている』  とっさに両手で頭を抱えるが、どうしようもない。  昼休みで誰もいないプールにザブンと大きな音が鳴り響く。  良治が、ゴンという衝撃と音で目を開けると、水面とそのうえに続く空が見える。  水が赤く濁っていく。良治の血だ。  そのとき、誰かの手が水面から差し入れられる。  良治は薄れゆく意識の中で、その手を掴もうとするのだが。 ◇ ◇ ◇  目が覚めるとそこには、河童がいた。  緑色の長い髪、二重まぶたの大きい目、少し低めだがこぢんまりとして可愛い鼻、大きめだが口角が上がって美しい口。だが身体の後ろ半分は緑色の鱗に覆われており、亀のような甲羅を背負って、頭のうえには皿がある。どうみても河童だ。  ただ、全裸なので、小ぶりだが形の良い乳房には目のやり場に少し困る。  良治は周りを見渡そうとするが、床を含めた全体に白いもやがかかっていてどこだか分からない。すると河童が喋りかけてきた。  「私は水の女神アグアです。」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加