再会の雨音

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 手の甲がぶつかった。  一瞬だけ触れた体温に、思わず大げさなほど手を引っ込めた。  振り返った彼と目が合う。  胸元まで引き寄せられたわたしの手を見つめ、彼は何も言わずに静かに笑った。  少し寂しそうに。  少し照れたように。  そんな彼の表情に、わたしの固く握り締めた手から力が抜けていく。  指先を冬の冷たい風がかすめる。  ゆっくり、ゆっくり、開いた手を少しずつ、少しずつ、彼の方へと伸ばしていく。  彼はただじっとわたしの手が近づいてくるのを待っていた。  もう少しで、彼の頬に触れそうな距離まで来ていたわたしの手は、不意にその動きを止めた。
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