04.禁断の果実

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 礼を言って笑うロビンの顔は屈託なく、その声はあまりに無邪気だった。転んで擦りむいた膝を消毒してもらった子供のような態度と、銃創は似合わない。  コンコン……まるでノックのような音が響き、2人が目を向けた窓ガラスに水が跳ねる。雨音は激しくなり、外は土砂降りの様相を呈していた。  水の檻に閉じ込められたみたいだ。  埒もない己の考えに苦笑したコウキへ、再びソファに落ち着いたロビンが声を掛けた。 「オレがあの部屋から出た理由は――おまえだ」  窓際に近づいて雨を見ていたコウキが、驚いて振り返る。  合わさった眼差しに満足したのか、ロビンはケガした右足を上に組み、両手を膝の上に置いた。指同士を絡ませて組んだ両手の中で、親指だけが僅かに動く。以前から見せる彼の癖だった。 「……どういう意味だ」 「おまえに出会わなければ、再び外に出ることなく退屈な日々を送ってただろう。人を『解放』するのにも飽きてたからな……」  コウキがロビンの管理人になったのは、国家機関からの要請だ。別にコウキ自身が望んだ仕事でない以上、別に責任を感じる必要はない。  分かっていても、心のどこかで思う。  俺が断っていたら、もしかして……もう犠牲者を出さなくて済んだのではないか? 「開放?」  似合わない言い回しに、ロビンは口角を持ち上げて笑みを作った。     
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