01.約束の雨

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「監視ならとっくに眠らせたさ。折角の逢瀬なのに、無粋な観客は必要ない……そうだろ?」  ロビンという男をある程度知っていれば、「眠らせた」という単語の意味は明白だ。  明日にでも死体が発見され、組織によって秘密裏に処理される筈。国家権力と云う性質の悪いスポンサーを持つ組織では、捜査員の処理など日常茶飯事だろう。  表沙汰にならないと踏んだからこそ、ロビンもあっさりと犯行を自供している。 「『……血の臭いがする』」  呟いたコウキは、既視感がある言葉に唇を噛んだ。  あれはそう……資料で指を切ったコウキへ、ロビンが放った一声だ。顔を見るなり向けられた言葉、滲んだ血を舐め取った舌と噛み付かれた感触まで思い出し、己の記憶力の良さを呪った。 「そうだろうな」 「捜査員の返り血」  舌打ちしたい気分で、責める響きを滲ませたコウキが蒼い瞳で睨みつけたミラーの中、殺人犯は首を横に振って否定した。 「返り血を浴びるほど派手じゃない」  背後から近付いて首の後ろから細身の刃を突き刺した。ほとんど血を流すことなく息絶えた1人目、ペアを組むFBIの片割れが死に際に向けた銃弾を足に受けたのは、本当に予想外だったのだ。  自分でも笑えるほど、勘が鈍っていた。  だが、それらをコウキに告げる気はない。     
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