02.破滅への一歩

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 どうせ……すべてが終わるまで殺されはしない。彼が自分の何に興味を抱いているのか分からないが、彼が口にした5つの問答のうち、まだ3つが残っていた。  退屈を嫌う彼の性格を考えれば、その3つが終わるまで、コウキを殺さない。  もちろん猛獣と同じで、何を考えているのか本音は理解できないが…。殺されたらそれまで、と奇妙な覚悟もあった。 「……着いたぞ」  声をかけて、ようやくロビンの瞼が上がる。青紫の珍しい色の瞳が数度瞬き、口元が緩められた。 「……海か」  久しぶりだ。そんなニュアンスを汲み取らせる呟きの後、彼は促されるまま車を降りた。  三つ編みから零れた僅かな髪を潮風が弄び、すでに止んだ雨の匂いが残る土を踏みしめるロビンが振り返る。 「お前の実家、だったか?」  疑問形をとりながらも、完全に答えを知っている発言だった。その証拠に、彼の目は面白そうに細められている。  夕日が周囲を照らす時間帯を過ぎた浜辺は、すでに闇色に染まり始めた。  このコテージ風の洋館から、浜辺まで僅か百メートルほど……何も遮る物がない絶景が広がる。 「ああ」  常に持ち歩いている鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。管理会社を雇っているから、いつでも使える状態で、掃除された室内へ足を踏み入れる。  研究に行き詰った時や1人で考え事をする際に訪れる家は、様々な思い出が詰まった宝箱だった。     
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