03.無能の実験

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 脱走を仄めかしたロビンへ「どうして出られると思う?」と尋ねたコウキに、彼は嬉しそうに双頬を崩して約束したのだ。 「……これは確定した未来の話だ。5つの質問とは別に1ヵ月後なら答えよう。場所と時間はこちらから指定させてもらうとしよう」と。  少し身を乗り出したロビンが、右手で持ったカップを左手で包み込む。彼の身がゆっくりソファに背を預けて寛ぐのを、コウキは緊張した面持ちで待った。 「……録音するか?」  ボイスレコーダーを使用していた過去を揶揄る彼に、「ああ」と素直にカバンから取り出して机に置いた。パチンと指先でスイッチを入れたのを、興味深そうに待つロビンが語り始める。 「まずは詫びよう。本来なら2ヶ月前の約束だった」  だがその頃、コウキはFBIに拘束されていた。ロビンを逃がした協力者だと疑われ、連日に及ぶウンザリするような取調べ――思い出して渋面になったコウキに、ロビンは溜め息を吐く。 「コウキが疑われるのは予想したが、連中はあまりにも無能過ぎた。手がかりをあんなに沢山残してやったのに……」  取調べが長引いた理由のひとつに、コウキの優秀な頭脳が影響している。遺留品を見せられたコウキの的確な指摘により、脱走の大まかな様相が掴めた。     
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