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05.悪夢のような過去
あの日、雲ひとつない晴れた晩夏の青空が広がっていた。
日曜日に両親が揃って朝食を取り、最初の客は有名大学の名誉教授の肩書きを持つ初老の男性。コウキを大学で引き取りたいと申し出た彼に、母親は興奮した様子で首を横に振った。
ぎゅっと抱き締められ、苦しいながらも嬉しいと感じたのを覚えている。
午前中は庭の芝を手入れし、お昼を一緒に作っていた時だった。外でサーフィンの準備をしている父親に手を振ってキッチンへ戻ったコウキは、玄関の呼び鈴に立ち止まる。
すぐに手を拭きながら歩いてきた母親が笑って、ぽんと頭へ軽く触れた。そして……ドアを開けた瞬間、風船が割れるような音がして彼女が倒れる。
「…ぁ……っ!」
声が出なかった。いや、きっと悲鳴じみた甲高い叫びを発していたのだろう。
「どうした!?」
叫びながら飛び込んできた父親が、崩れ落ちた母の姿に目を見開いて走り寄る。そして再び風船が破裂したような軽い音―――逆光になったドアの向こうに立っていたのは、見知らぬ男だった。
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