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03.無能の実験
中に数歩進んだロビンが立ち止まり、少し目を伏せて考え込むような仕草を見せた。
顎に手を当て、検分するようにフローリングの床を眺める。オープンタイプのキッチンカウンターでお茶の準備をしていたコウキは、振り返って息を呑んだ。
ロビンの行動自体は問題ない。
だが、その場所は……。
「なるほどね」
納得した様子で頷くと、何も置かれていない床を回り込んでからソファに落ち着く。まるで自室にいるような穏やかな表情を浮かべ、口元に意味深な笑みを浮べた。
「悪いな」
青ざめたコウキが差し出したコーヒーカップに躊躇いなく口をつけ、薄めに淹れられた琥珀色の液体を飲む。以前と同じ、毒殺を恐れない態度はいっそ見事だった。
無言で向かい側に座ったコウキへ手を伸ばし、反射的に後退ろうとした姿に苦笑する。避けたコウキを気にせず、宙を掴んだ手で己の前髪を弄ったロビンが徐に話し始めた。
「さて、以前の約束を果たそうか」
「……約束?」
「そう、本当なら1ヵ月後に果たされる筈だった」
そこまで聞けば、コウキにも心当たりがあった。
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